【期間工】6か月自動車製造の組立作業員として働いてみた。その3

ということで教育完了。実際に働きだした。実際に工場で労働開始~GWまで1か月ほど。
はてさて「過酷」「苛烈」「危険」の数あるKの中でもワースト3Kというのは事実なのか。実体験記その3。

事実上の初勤務の内容。

ようやっと工場内の自分が担当する現場に案内されて作業に従事する。
最初は先輩社員(社員? 期間従業員? おそらく社員。その紹介すらない)の作業をひたすら眺めて流れを覚える。

次にラインに組み込まれ、作業の半分くらい、例えば 部品1はめ込み→ボルト締め付け→部品2はめ込み→ボルト締め付け……の作業の、「部品2はめ込み→ボルトの締め付け」だけを担当する、みたいな『一つのラインを先輩社員と自分との二人で担当する』ような作業法で流れに入る。
社員さんはフォローをしてくれながら作業手順の説明を挟んだりする。

1日目はそれだけで終了。
ボルトの角度が違うとすぐガリガリなるし、ボルトをぽろぽろ落とすとそれだけで時間オーバーになるしと最初は大変。
ただ、初日だけでも4時間以上はボルト締め付け作業をしたので少し慣れる。

2日目、3日目、4日目も作業する場所を交代するなどしてポイントやコツを含めて自分が担当する作業全体を覚えていく。
初めてで知りようが無いもの、見ただけじゃ覚えられないものも「そうじゃないだろ」みたいに叱責を受けながら作業する。
ぶっちゃけここが一番つらい。バックレ原因の最大のポイントじゃないだろうか。
教えてもらっている最中に唐突に声を荒げたりするので、精神疾患を抱えている可哀そうな人だと思いながらヘイヘイ言いつつ作業を覚える。
こんな場所で、かつ毎日毎月様々な新人を相手にしているんだから、そりゃ一方的にもなるわな、と少し同情もする。

あと教育期間中もそうだったけど、「痛いところはないか?」と聞く割に「まあ、痛くても(おおげさに)痛いと言わないでね」みたいな釘刺しがちょいちょい入る。

教え方も下手。雑。精神論。
1分の作業を1分10秒でやったら、

「あと10秒縮めろ。全動作本気出せ」

みたいに言われる。

いや、これでも結構限界ギリギリなんですが!
あんたマラソンで全力疾走完走できんのかよ!
8時間近く動き続けなきゃならんのに常に全力全開は無理に決まってんだろクソが!

とは言わないけど、内心悪態をつきたくなることが多数。
ぶっちゃけ慣れでしか解決しない問題をいちいち最適解のお手本を見せて「こうしろ。なんでできない?」と言われる。
具体的に言っているつもりなんだろうけど、それが全て要領を得ない。

これはつまり、『教育者が教育者としての教育を受けていない』ということなんだと思う。

ただ長く現場を知っていて、その作業を出来る(熟知しているわけではない)人がその作業のやり方を新人に押し付けてるだけ。

「ここをこうしとかないと後の工程で困るだろーが」

とか言われても知らんがな。後の工程どころか隣の工程が何してるのか知らんのに。
こういう人が指導者なのは本当どうにかしてほしい。

コンビニの店長ですらもっとまともだったぞ?

まあそれでも「はい、すいません! 頑張ります!」みたいにニコニコ対応をして過ごしたけれど、当時を振り返ると短気なやつなら反論したり殴りかかってもおかしくない態度だった。

話を戻して。

期間工の作業はおよそ3日~2週間くらいで独り立ち、というようなイメージ。簡単な工程、難しい工程では早くなったり遅くなったりもする。
一人で淡々とこなせるようになってからは期間工は割り切った仕事になる。楽ではないが、最初よりは気楽。それまで1、2か月ほど。というか指導者がいないのが一番気楽。それ以降は働くリズムが分かると更に楽。
1か月我慢しろ、という言葉も結構言われるが、つまりはその点だと思う。
まあ、それでも毎日筋肉痛とバネ指との戦いではある。
楽になるのは体が慣れて楽になるのではなく、体のケアの仕方を覚えて1週間通しで働いてもなんとか過ごせる状態になるだけ。
体に高負荷がかかる仕事を8時間以上ほぼぶっ通しでやるのは普通の一般人には無理です。
疲労とそれによる体のガタは毎日訪れる。それを対処するのが上手くなる、という表現の方が正しいかもしれない。
1年以上働いたり、もしくは他の工程なら分からないけれど、ライン工を1か月経験した程度では体は順応しません。

で、実際に一か月を終えて。

同期でも一番つらい時期である3日~1週間以内でバックレる奴が多数だった。当たり前だ。普通に肉体的にも精神的にも辛い。仕事経験のない18歳前後だったら逃げ出してもなんらおかしくはない。なんの責任感も罪悪感もなくバックレる奴は当然ダメだとして、追い込まれた挙句に『逃げる』という選択肢を取る人は責められるべきではないと私は思う。それほどにきつい職場ではある。

次頑張りゃいいんだよ次。期間工なんて掃いて捨てるほどいるし、向こうはそういう扱いなんだから。

今は高給という釣り餌で人を寄せているけど、人が来なくなったら体制変えなきゃいかんよなぁ、と思う。それぐらいに人を使い捨てている職場の印象。

で、いつでもニコニコ対応をしていたおかげが、社員さんもそれなりに雑談してくれるようになり、内情実情その他もろもろを聞き出せた。身内に優しい村社会、といった職場のようだ。
一応言っておくが、指導をしてくれた社員さんは普通にどこにでもいる普通の人。
印象はチェーン店、フランチャイズ店の店長タイプ。夢は大きく語り、洗脳されているかのように自分の仕事に誇りを持ち、他人にもそれを強いるちょっと暑苦しいタイプ。そして(可愛い)女の子だけ扱いが違う。

いや乏しているわけではないよ? でもいるでしょ、そういう雇われ店長タイプ。

そんな店長さんが仕事中になると少しおかしくなるのは、おそらく期間工という玉石どころか泥ヘドロ混合な人種を相手にする仕事で精神が病んでいるため。
バックレられた経験は数知れず、楽な工程にあたるまでひたすらできないアピールする奴とか、1日どころか1時間で腰をやったおじさん、日本人なのに言葉が通じない人間、叱るとびっくりするぐらい泣く奴まで、さまざまな人がいたんだとか。
それは期間工で来た人間に問題がある点もあるとは思うが、指導法にも少し問題があったりと思ったり。
ただ、教育は現場に一任されているようで、『何人も辞める人が続出する』というような状況でも上からの指導はなく、「あそこは簡単なんだけど、なんか魔の工程だよなぁー」なんていうさも都市伝説かのように他人事に話す。
そういう工程は2~3人使い潰すと使える人が一人入ってくる、らしい。

なんかもう、期間工が魔境だわ、と思ってしまった。

続く。

期間工

Posted by luini